50代から始まる、家族への静かな贈り物|ニュージーランド子育てで気づいた親の役目

50dai-kosodate-kazoku-shizukana-okurimono-newzealand.jpg ニュージーランド 子育て

50代から始まる、家族への静かな贈り物

50代 子育てを続ける中で、最近よく思うことがあります。
それは、年齢を重ねるにつれて失うものが増えていく一方で、家族に残せるものもまた見えてくるということです。

いちばん感じるのは、やはり体力です。

もちろん、同じ50代の中では元気な方かもしれません。
フルマラソンも走りましたし、フルアイアンマンにも挑戦しました。
「次は何をやろうか」と思える気力も、まだ自分の中には残っています。

それでも、若い頃のようにはいきません。

昔は朝から晩まで働いても、気合いや若さで何とか乗り切れていました。
多少無理をしても、寝れば回復するような感覚がありました。
でも今は、できないわけではないけれど、前ほど無理がきかなくなってきたと感じます。

そんなふうに、50代は体力の変化や衰えを感じやすい時期なのかもしれません。
けれど同時に、50代だからこそ見えてくるものもあります。

それは、家族に何を残せるかという視点です。


50代になると、何が大切かが少しずつ見えてくる

私は今、家族とともにニュージーランドを拠点に暮らしています。
先週は、南島で過ごしていた長女が帰ってきていました。

そのとき娘が、
「パパ、一緒にちょっと走りに行かない?」
と声をかけてくれたんです。

正直、仕事終わりで少し疲れていました。
心の中では、「今日はちょっとしんどいな」と思ったのも本音です。

それでも私は、
「一緒に行こうよ。どれくらい走る? 久しぶりに一緒に走るの、楽しみだな」
と答えて、30分ほど一緒に走ってきました。

こういう時間なんですよね。
あとから振り返ったときに、心に残るのは。

50代になると、若い頃のように勢いだけで何でもできるわけではありません。
でもその代わりに、何を優先したいのかがはっきりしてくる気がします。

仕事の成果も大切です。
収入も大切です。
けれどそれ以上に、家族と一緒に過ごす何気ない時間の尊さがわかってくる。

それが、50代という年代の深さなのかもしれません。


若い頃は「何を得るか」、今は「何を残せるか」

若い頃の私は、いつも仕事のことを考えていました。

何が学べるんだろう。
どうすれば去年より成長できるんだろう。
もっと知識を増やしたい。
もっと仕事ができるようになりたい。
もっと効率よく働きたい。
もっと上のポジションに行きたい。
もっと収入を増やしたい。

そうやって前へ前へと進むことばかり考えていた気がします。
それはきっと、家族を豊かにしたいという思いもあったからです。

でも今は、少し考え方が変わってきました。

今の自分が考えるのは、
妻や3人の娘たちに何を残せるだろう
ということです。

もちろん、お金は大切です。
でも、お金は使えば終わってしまいます。
だからこそ私は、お金そのものだけではなく、お金との向き合い方も家族に残したいと思うようになりました。

たとえば、収入が入ったら全部を使ってしまうのではなく、まず貯める分を確保する。
将来に備える分を分ける。
必要であれば投資にも回す。
そして残りのお金で暮らす。

多くの人は、生活費を使って余った分を貯蓄に回すのかもしれません。
でも我が家は、先にセービングを取り、その残りで生活することを意識してきました。
その積み重ねによって、1年後にはだいたい計算通りの額が残っていたように思います。

こういうことは派手ではありません。
けれど、家族に残せる大切な知恵のひとつだと思っています。


子どもは、親の言葉よりも生き方を見ている

少し前の父の日に、娘たちが手紙を書いてくれました。

そこには、私が何気なく言った言葉や、
私自身はもう忘れていたような小さな出来事が書かれていました。

「ああ、こんなことを覚えていてくれたんだ」

そう思うと、とても嬉しくなりました。

親の方は、毎日の中でつい流してしまうことがあります。
でも子どもは、案外そういう何気ない言葉や態度を、ちゃんと受け取っているんですよね。

だから私は、なるべく自分の気持ちを言葉にして伝えるようにしています。
できるだけわかりやすく、できるだけ娘たちの将来の支えになるように。
もちろん、全部が届くわけではないでしょう。
でも、その一部でも心に残ってくれたら嬉しい。
そんな思いで言葉を選んでいます。

同時に、言葉以上に大切なのは、行動で示すことだとも思っています。

50代を超えた自分がマラソンを走り、体を動かし、挑戦を続ける。
フルタイムで働きながら、時間を見つけてトレーニングをする。
休みの日には、妻の負担を減らすために家事もする。

そういう姿を見せることで、
「年齢を理由に諦めなくてもいい」
「忙しくてもやれることはある」
ということを伝えたいと思っています。

高校3年生の娘は、勉強や課題でとても忙しくしています。
「時間がない」「やることが多い」と言うのも当然です。
本当に頑張っていると思います。

だからこそ私は、口で「もっと頑張れ」と言うのではなく、
自分がどう生きるかで伝えたいと思っています。

子どもは、親の言葉よりも、親の生き方を見ている。
最近、そのことを強く感じています。


ニュージーランド子育てで気づいた、親の役目

私たちは、ニュージーランドで子育てをしてきました。
日本で子育てをした経験がないので、単純な比較はできません。

それでも、日本にいる友人たちの話を聞いていると、考えることがあります。

それは、日本の子育てや教育には、どこか
「レールに乗せてあげることが安心につながる」
という感覚があるのかもしれない、ということです。

もちろん、それが悪いという意味ではありません。
安定した道を示してあげることも、親の愛情のひとつだと思います。

でも私は、それ以上に、
子ども一人ひとりが持っている個性を大切に育てたい
と思ってきました。

子どもの人生に、親が点数をつけることはできません。
得意なこともあれば、苦手なこともある。
早くできることもあれば、時間をかけて育つ部分もある。
でも、その全部がその子の個性であり、その子らしさだと思うのです。

親の役目は、子どもを型にはめることではなく、
その子がもともと持っている力を自然に伸ばしていけるよう支えること。
私はそう思っています。

その意味で、ニュージーランドという環境は、私たち家族にとってとてもありがたい場所でした。

人と違っていてもいい。
同じでなくてもいい。
その子らしさを大切にしながら育っていける空気が、ここにはあるように感じています。

だからこそ私たちも、娘たちを「こうあるべき」という型にはめるのではなく、
もともと持っている素晴らしい個性を大切に育てる手助けをしたいと思ってきました。

しっかり働くこと。
しっかり愛情を注ぐこと。
必要なときに支えること。
そして、子どもが自分らしく育っていけるように見守ること。

それが、親としてできる大切な役目なのだと思います。


私もまた、親から生き方を受け取ってきた

考えてみれば、私自身も親からお金や物だけを受け取ってきたわけではありません。
生きる姿勢を受け取ってきたのだと思います。

父は大工でした。
本当によく働く人でした。

家でゴロゴロしている姿を、私はあまり見た記憶がありません。
休みの日でも、次の仕事のために道具を整えたり、作業場を掃除したり、鉋の刃を磨いたりしていました。
いつでも仕事に取りかかれるように準備をしている。
そんな父の姿が、私の中に残っています。

母の存在もまた、大きなものでした。
母は専業主婦で、私が学校から帰ると、いつも家にいてくれました。
台所にはごはんの匂いがあって、その「当たり前」が、子どもの頃の私には普通のことでした。

でも今になって思います。
あれは決して、当たり前ではなかったのだと。

母は、家族に何かあったときにすぐ動けるように、家を守ってくれていたのかもしれません。
自由よりも責任を優先して、家族を支えてくれていたのだと思います。

父の働く背中。
母の変わらない居場所。
そういう一見普通に見えるものが、実は子どもにとってはとても大きな贈り物なのだと、今ならわかります。


50代は、失うばかりの季節ではない

50代は、体力や気力が少しずつ下がってくる年代かもしれません。
でも私は、それだけの年代ではないと思っています。

確かに、若い頃のような無理はきかなくなります。
けれど、体を整え、生活を整えれば、まだまだ動ける。
そして何より、50代には若い頃にはなかった余裕が生まれてくる気がします。

今までより少し周りを見渡せるようになる。
他の人のことを考えられるようになる。
家族に何を残したいかを、落ち着いて考えられるようになる。

収入も立場も、ある意味ではひとつの節目を迎える時期です。
だからこそ、「もっともっと」と追いかけるだけではなく、
何を手渡していくかを考えられる。

愛情。
言葉。
ぬくもり。
生き方。
そういう目に見えないものを、次の世代に残していける年代なのだと思います。

だから私は、今の50代をとてもいい季節だと思っています。
失うものがあるからこそ、大切なものもはっきり見えてくる。
そんな豊かな時間のように感じています。

この10年を大事に過ごせたら、60代も70代も、きっともっと幸せに、もっと楽しく生きていける。
そんなふうに思いながら、今日もまた、自分にできることを積み重ねていこうと思っています。

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