【2022年回顧】ニュージーランドで出会ったアートと美食の一夜――地元アーティストとのコラボで披露した、私の「再解釈モンブラン」
2022年、ニュージーランド・タウポでの忘れがたい一夜。
冬の気配が深まる季節、地元で開催されたウィンターフェスティバルに、私はパティシエとして参加させていただきました。
このイベントは、地元のアーティストと料理人たちが1皿ずつコラボレーションし、4コースの完全限定メニューを完成させるという、非常に稀有なプロジェクト。

この時のスペシャルカクテル
〇第1皿:南アフリカの香り、鴨とビートルートの静かな調和
最初の皿を担当したのは、かつて一緒に働いた縁のある南アフリカ出身の才能ある女性シェフ。 彼女の感性は、アフリカの大地とヨーロッパの技術が融合したような、力強くも繊細なもの。
彼女の前菜は、低温調理した鴨のコンフィ。
しっとりとジューシーに仕上げられ、皮はパリッと。
添えられたのは、タウポ産ビートルートを主役にしたベジタリアンディッシュ。
生、ドライ、ピューレ、ゼリー状など、4つの異なる調理法でビートルートの魅力を引き出し、紅紫色のグラデーションがまるで夕暮れの空のように美しかった。
〇第2皿:ミシュラン星付きシェフが魅せる、金箔のラビオリ
セカンドコースは、タウポでfine Diningを主宰するフィリップ氏が担当。 スコットランドで長年修業し、最終的にヘッドシェフとしてミシュラン2つ星を獲得した実力者です。 彼のパスタは、金箔を纏ったラビオリ。 中には、ニュージーランド産のリコッタチーズとフレッシュハーブのリッチな詰め物。 軽く焼いてからサワークリームとハーブオイルで仕上げ、表面のきらめきが、冬の星空を思い出させました。
シンプルながらも「高級感」を寸分の狂いもなく表現した、まさに職人技の一皿。
〇第3皿:ツランギから世界へ――オーストラリアで活躍する天才シェフの“大地の主菜”
3皿目は、タウポから車で約40分の“ツランギ”(Tūrangi)出身で、現在はオーストラリアで活躍中の非常にクリエイティブなシェフとのコラボレーション。 かつて一緒に厨房で長時間働いたこともある彼は、自然と調理技術を深く融合させる独自のスタイルを持つ、稀有な存在です。 ツランギの森や川、大地の恵みに育まれた感性を今も料理に活かしており、オーストラリアのフードシーンでも注目されています。 彼のメインは、長時間低温調理した牛ほほ肉のポーション。 ニュージーランドワインを贅沢に使ったソースでじっくり煮込み、口の中でとろける柔らかさに。 そこに合わせたのは、蒸してから柑橘と白ワインでマリネしたムール貝、そして地元で採れた季節の野菜。 特に印象的だったのは、牛の重厚さとムール貝の潮の香りが見事に調和していた点。 見た目は控えめでも、味の深さとバランスはピカイチ。 「冬の大地と海が交わる瞬間」を、この一皿に閉じ込めていました。〇最終皿:ルアペフ山の雪――私の「モンブラン再構築」
そして、私の番です。
私がコラボを果たしたのは、地元のガラス工芸アーティストたちによる「ルアペフ山の冬」という作品。
雪を被った山を、白と青の繊細なグラデーションで描いたガラスアート。
冷たさと静けさ、そして自然の威厳が一体となった、息をのむような美しさ。
その瞬間、私は決意しました。
「これにはモンブランしかない――でも、ただのモンブランではないものにしよう」。
▶ 私の「再構築モンブラン」の構成
- ベースには、レディーフィンガースポンジケーキを使用。
- そこに、スペインのシェリー酒(Xérès)を使ったアロマティックなシロップをたっぷり含ませ、深みのある風味を加えました。
- 上にのせたのは、滑らかなマロンペースト。甘すぎず、上品な苦味を残すよう調節しています。
- そして、仕上げに――コイン状にカットした軽いメレンゲを、山肌のように重ねました。 → これもメレンゲですが、通常のスポンジやメレンゲとは異なり、サクッとした食感と空気感を与える工夫です。
- 最後に、食用のシルバーパウダー(またはパールパウダー)を軽く降りかけ、雪の降り積もった山の頂を表現。
見た瞬間、「ルアペフ山か…?」と見間違えるほどのビジュアル。
そして、口に含めば、シェリー香が鼻に抜け、マロンとスポンジの層が絶妙に溶け合う――
「アートから生まれた味」 というテーマが、ようやく形になりました。

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