ニュージーランドのタウポは、今朝も澄んだ空気に包まれています。今日は私の仕事が休み。妻と娘たちがそれぞれの職場や学校へ出かけた後、私は静かに掃除機をかけ、洗濯物を干しました。それから夜のご飯の仕込みを少し。
日本の友人たちにこう話すと、「マメだね」「よく手伝って偉いね」と言われることがあります。しかし、私は「手伝っている」という感覚は微塵もありません。
今回は、私がNZでの生活やアイアンマンへの挑戦を通じてたどり着いた、「家族というチーム」を運営するための合理的な哲学についてお話しします。特に、毎日を戦い抜いている日本の「戦友」であるお父さんたちに、ぜひ届いてほしいメッセージです。
1. 「手伝う」という言葉を捨て、オーナーシップを持つ
かつての日本には「男は外、女は内」という空気がありました。私の両親の時代はそれで成り立っていましたし、一生懸命働いてくれた父や、家を守ってくれた母を私は今でも尊敬しています。
しかし、時代は変わりました。今の世の中で、一人の収入だけで家族の幸せを支え続けるのは、あまりにも荷が重すぎます。我が家でも、妻は自分の意志で仕事に出ています。彼女が家計を助けてくれることは、チームにとって非常に大きな助けです。
そうなった時、家事を「女性の仕事」と決めつけるのは、戦略的に見て全く合理的ではありません。
「家事は、時間がある人間がやる。やれる人間がやる」
これが私の考えです。私が今日、夕食の仕込みを済ませたのは、妻が帰宅した後に「慌てて料理をする時間」を「二人でのんびり散歩する時間」に変えたかったからです。
家事をやるのは「親切」ではなく、家族というチームが円滑に、かつハッピーに回るための「投資」です。自分が動くことで、パートナーに「30/70の法則」の「70%の余力」をプレゼントする。それが結果として、自分に返ってくる一番の報酬になるのです。
2. 「船長」が二人いていい。大切なのは『モモ』が教えてくれた「聴く力」
家族を一つの「大きな船」に例えるなら、夫婦は共に舵を取る共同キャプテンです。船を前に進めるためには、密な作戦会議が欠かせません。
我が家の作戦会議は、もっぱら散歩中に行われます。子どもたちがいない場所で、妻と二人、たわいもない話をします。ここで私が何よりも大切にしているのは、ミヒャエル・エンデの名作『モモ』に登場する少女、モモが持っていた「聴くという魔法」です。
物語の中で、モモの不思議な力はこう描写されています。
「モモに話を聞いてもらっていると、バカな人にも急にまともな考えがうかんできます。……モモがそうなるように、なにかを言ったり質問したりしたわけではありません。彼女はただ、じっと座って、注意深く、心をこめて聞いていただけです。」
(ミヒャエル・エンデ『モモ』より引用・構成)
50代を過ぎた男がやりがちな失敗は、相手の話に対して「それは君が間違っているよ」と正論を吐いたり、「こうすればいいのに」と解決策を提示したりすることです。しかし、家庭というチームにおいて、パートナーが求めているのは「正解」ではありません。
ただ隣で「そうか、そんなことがあったんだね」と、心をこめて頷く。モモがそうしたように、相手が自分の力で心の中を整理し、答えを見つけるための「時間」と「場所」を提供すること。
この「聴く」という行為は、一見何もしていないようでいて、実はパートナーの心の重荷を降ろし、再び船を力強く前進させるための「最高級のメンテナンス」になるのです。アドバイスをする代わりに、彼女の話をただ聴く。それだけで、家庭というチームの空気は驚くほど軽やかになります。
3. 背中で見せる「最高の教育」
私は娘たちに、「家事をしなさい」と口うるさく言うことはありません。その代わり、私が妻に感謝し、当たり前に家事をこなし、失敗したら「ごめんね」とすぐに謝る姿を見せるようにしています。
親が互いを尊敬し、助け合っている姿を見せること。これ以上の教育はないと信じているからです。
おかげさまで、娘たちはどこへ行っても店員さんに「サンキュー」と笑顔で挨拶ができる、礼儀正しい女性に育ってくれました。それは、私の教えではなく、妻が日々周囲に感謝を伝える姿を彼女たちがコピーした結果です。
「幸せな親の姿」こそが、子どもたちへの最高の子孝行なのです。
4. 日本で戦い続ける「戦友」たちへ
最後に、日本の企業戦士として、毎日ボロボロになるまで働いているお父さんたちへ、あえて熱く伝えたいことがあります。
皆さんの仕事量は、世界的に見ても異常なほど多い。本当によく頑張っています。疲れ果てて帰宅し、冷えたビールを飲んでソファで倒れ込みたい気持ちは痛いほどわかります。
でも、あえて言わせてください。あと5分だけ、家族のために踏ん張ってみませんか。
玄関を開けて、冷蔵庫へ直行する前に、まず奥様をハグしてください。あるいは、肩を揉んであげたり、一言「ありがとう」と声をかけたりしてもいい。「今日も一日、家族を守ってくれてありがとう。あなたがいてくれるだけで助かるんだ」と伝えてください。お子さんの頭を撫でて、今日あった話に「へぇ、そうなんだ!」と耳を傾けてあげてください。
あなたが「企業戦士」として戦っている間、家族もまた、それぞれの場所で戦っています。お父さんが家で「大きな子ども」になってはいけません。チームの一員として、小さなことから役割を持ってください。
「お父さんがいてくれるから、このチームは今日も最高の状態で進めるんだ」
そう家族に思わせることができたら、あなたの疲れは半分になり、幸福度は何倍にも跳ね上がります。
余裕を持って、自分を殺さず、自然体で。でも愛する人のためには全力で動く。
50代、まだまだこれからです。明日もまた楽しい日が来ると信じて、一緒に幸せな家族というチームを作っていきましょう。ニュージーランドの空の下から、日本の戦友たちを心から応援しています。

ニュージーランドの豊かな自然の中で育む、家族という「チーム」を前進させるための合理的な絆。

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