頑張っているのに回らない40代・50代へ。僕がたどり着いた「30/70の法則」
タウポの朝は静かです。
湖のほうからやわらかい空気が流れてきて、慌ただしい日でも、ほんの少しだけ「まあ落ち着けよ」と言われている気がします。
でも、昔の僕はそんな静けさとは真逆でした。
若い頃は、何でも100%、いや120%でやるのが当たり前だと思っていました。
それが責任感だし、男の生き方だし、家族を支える大人ってそういうものだろう、と。
頼まれた仕事は断らない。
人に任せるより、自分でやったほうが早い。
少しくらい無理してでも、最後までやり切る。
むしろ、そうやって頑張っている姿がかっこいいとさえ思っていました。
でも今ならわかります。
車だって、アクセルをベタ踏みしたまま走り続けたら壊れます。
人間だって同じです。
仕事で全部出し切って、家に帰る頃にはもうタンクのガソリンは空っぽ。
優しくしたい家族がいるのに、心の余裕が残っていない。
これ、けっこうきついんですよね。
今日は、そんな僕が50代になってようやく身につけた「30/70の法則」について書いてみようと思います。
30/70の法則は、余白を残して動くための考え方
僕にとって30/70の法則は、ひとことで言えば余白を残して動くための考え方です。
全力で行かない。
でも、手を抜くわけでもない。
ここ、ちょっと誤解されやすいんですが、30/70はサボることではありません。
仕事の質を落とすことでもないし、本気を出さないことでもない。
むしろ逆です。
最初の30%に、本気を出すんです。
計画を立てる。
優先順位をつける。
どこを自分がやるのか、どこを任せるのか、どこに余白を残すのかを決める。
その最初の30%をしっかり動かすことで、残りの70%を巡航させていく。
そんなイメージです。
僕の感覚では、30%の力で、残りの70%を走らせる感じでしょうか。
しかも、その70%はただ流しているわけじゃありません。
急な仕事。
急な依頼。
のっぴきならない出来事。
そういう時にちゃんと対応できるように、力を残しているんです。
不測の事態って、全部予測する必要はないんですよね。
でも、いざという時に困らないように、自分の心に先に余裕を持っておく。
それが僕のいう30/70の法則です。
言い換えれば、これは少しリスクマネジメントに近い考え方なのかもしれません。
昔の僕は、一速しかないドライバーでした
昔の僕は、とにかく何にでも100%、120%で取り組んでいました。
今ふり返ると、あの頃の僕は仕事のギアがひとつしかなかった気がします。
一速しかないドライバー、そんな感じです。
坂道でも一速。
平地でも一速。
高速道路でも一速。
そんな走り方をしていたら、そりゃ疲れます。
エンジンはうるさいし、壊れそうだし、ガソリンだってどんどん減っていく。
でも当時の僕は、それが真面目に働くってことだと思っていました。
人に任せるのも苦手でした。
だって、自分でやったほうが早いし、きれいだし、イメージ通りに仕上がるから。
誰かに任せて少し違うと、文句を言ったり、結局自分でやり直したりしていました。
今思えば、まあまあ面倒くさい人だったと思います。
ずっと緊張して働いていたから、疲れるんですよね。
家に帰る頃には、もう何もする気が起きない。
それでも子どもはかわいいし、家のこともやりたいから、また無理して動く。
あの頃は、妻にもずいぶん苦労をかけたと思います。
「もう無理だな」と思ったのは、仕事量より余裕のなさでした
「もう100%で走り続けるのは無理だな」と思ったのは、何かひとつの大事件があったからではありません。
仕事量がとにかく半端じゃなかった。
しかも、断れなかったんです。
何でもやっちゃうし、「これは仕事なんだから」と思って、自分で自分をどんどん追い込んでいました。
みんなが仕事を始める時間より、2時間も早く現場に入る。
そして、みんなが「じゃあ帰ろうか」と言う時間になっても、まだ一人で残って仕事をしている。
ボスからは「今日はもう帰れよ」と言われるんですが、
「これだけ終わらせたら帰るから、先に帰っててください」
なんて言っていました。
周りの人が「手伝おうか」と言ってくれても、受けなかった。
手助けを受けるのは負けのような気がしていたんです。
今思えば、あれは責任感というより、一銭にもならない変なプライドでした。
体力的にもきつかったですが、精神的にもかなりきていました。
イライラする。
ピリピリする。
夫婦の空気もちょっと悪くなる。
子どもたちも、きっと何か感じていたと思います。
塵も積もれば山となる、じゃないですが、そういう小さな無理の積み重ねが、僕を少しずつ削っていたんでしょうね。
その時に気づいたんです。
俺が余裕じゃなかったら、この船はまっすぐ進まない。
家族という船を前に進ませたいのに、船頭の自分が余裕を失っていたら、そりゃまっすぐ進まないですよね。
今の僕は、まず俯瞰してから動きます
今は仕事に行ったら、まず全体を俯瞰します。
どこが弱いかな。
どこは放っておいても大丈夫かな。
どこを任せていいかな。
そんなことを考えながら、まず全体を見るんです。
そのあとで、一つひとつの事柄をブレイクダウンしていきます。
もう一回見直して、漏れがないかを確認する。
それから職場の雰囲気を見る。
みんなに挨拶しながら、いつもと違うところはないかな、と軽く様子を見る。
僕の中では、これがすごく大事です。
いきなり細かいところに入らない。
まず俯瞰して、ざっと見る。
ちょっと気になるところがあれば頭の片隅に置いておいて、あとで深掘りする。
そこから1日の計画を立てます。
僕にとって仕事の30%は、ここです。
最初のプランニングと見取り図づくりに、しっかり力を使う。
ここができると、残りの70%がずいぶん楽になります。
そして意識しているのは、1〜2時間の余白を作ることです。
もちろん、仕事って全部が自分のコントロール下にあるわけじゃありません。
でも、その中でも自分でコントロールできる部分を見つけて、そこに余白を作る。
そうすると、急な依頼が来ても崩れにくいんです。
急な仕事が来た時ほど、慌てて全部を壊さない
急な依頼が来たら、まず一通り聞きます。
- それはすぐできるのか
- 自分がやるべきなのか
- 他の人でもできるのか
- 今すぐ対応が必要なのか
急ぎの仕事はたいてい「今すぐ欲しい」が多いので、そこは早くさばきます。
でも、気をつけているのは、そのせいで今やっている仕事が全部おろそかにならないことです。
だから、今の作業にちょっと区切りをつけておく。
急な依頼が終わったあとに、またすぐ戻れる状態にしておく。
もしくは、手が空いている人に
「悪いけど、これちょっと見といてくれない?」
と頼む。
昔の僕なら、全部抱えていたと思います。
でも今は、そこで抱え込まないようにしています。
休憩も、仕事のうちです
昔の僕は「ここまで終わるまでは休まない」というタイプでした。
でも今は、逆です。
休憩も仕事の一部。
ある程度、休憩する時間を決めておくんです。
そうすると、そこでひとつ区切りができます。
その休憩までに何ができるか、逆算して考えられる。
案外これが効率いいんですよね。
「この休憩までにここまでは確実にやろう」と思うと、集中できる。
休憩が楽しみだから、かえって仕事がはかどる。
思っていた以上に進んだら、
「よし、今日はちょっと長めに休憩しようかな」
なんて、自分にボーナスをあげたりもします。
最後に仕事がちゃんと回っていれば、それでいいんです。
家庭でも30/70の法則は同じです
この考え方は、家庭でも同じです。
家でも職場でも、なるべく楽しむ。
どうせやるなら、ゲーム感覚でやる。
掃除機をかけるにしても、
「ここは5分でやろう」
「次は10分」
みたいに区切るだけでも、少し気持ちが軽くなります。
そのうえで、自分なりのご褒美やボーナスを混ぜる。
「あそこをきれいにしたら、妻が喜ぶかもしれないな」
と思うと、ちょっとやる気が出るんですよね。
僕にとって家族は、いちばん大事なコアの部分です。
だから、自分のしたいことを後回しにしているという感覚はあまりありません。
むしろ、自分のしたいことが家族のことなんです。
家族という大きな船を前に進ませること。
それが、僕の最優先事項です。
午前中に家事を終わらせて、午後は家族の時間にする
共働きだったので、平日に僕が休みで、妻は夕方まで仕事という日がよくありました。
その時間は、ある意味では僕のフリータイムです。
でも、そのフリータイムに僕がやりたいことは、結局家族のためのことでした。
午前中のうちに、洗濯をする。
買い物に行く。
合間に掃除機をかける。
そして、なんとか家事を終わらせる。
できれば夜ごはんの準備もある程度しておく。
なぜかというと、妻が夕方帰ってきて、そこからまた台所に立つのはかわいそうだなと思うからです。
せっかく一生懸命働いて帰ってきたのに、
「まだ仕事があるのか」
みたいな気持ちにはさせたくない。
それが終わったら、サプライズです。
「よし、今日は天気がいいから、湖でハンバーガー食べないか?」
「パパが全部用意したから、みんなには大事な仕事があるぞ。湖で遊ぶ水着の用意だ。誰がいちばん早いか競争!」
こういうふうにゲーム感覚で言うと、子どもたちは大喜びなんです。
普段は自分の用意なんか全然しないのに、競争になるとものすごい勢いで支度する。
もちろん、何かひとつ忘れたりするんですけど、それもまた楽しい。
そして、平日なのにみんなで湖へ行く。
湖のそばで遊んで、ハンバーガーを食べる。
今でもあの時のことを思い出すと、口の中にハンバーガーの味が戻ってきます。
ああいう時間のために、午前中をうまく回していたんだなと思います。
完璧を手放したら、仕事はむしろ回るようになりました
30/70の法則を意識するようになって、いちばん変わったのは完璧を求めすぎなくなったことかもしれません。
昔は、細かいところまで全部きっちりやらないと気が済みませんでした。
でも今になって思うのは、その細かい差って、意外とそこまで大差なかったということです。
もちろん100%でやった仕事のほうが、細部まできれいかもしれない。
でも、その差に気づくのは、たぶん自分とか、その仕事に関わっている数人だけなんですよね。
最終的にクライアントに届くものとして見たら、そこまで大きな違いがないことも多い。
だったら、全部を100点にしなくてもいい。
赤点でなければ、まずはパス。
そう思えるようになってから、仕事はずいぶん回るようになりました。
人に任せることもできるようになりました。
もちろん途中でチェックはします。
「ちょっと違うな」と思うこともあります。
でも、そこで昔みたいに全部を自分のやり方に戻すんじゃなくて、
「まあ、これなら合格かな」
と思えるようになった。
そして不思議なことに、人に任せると、自分では思いつかなかったアイデアややり方を見せてもらえることもあるんです。
あれは、自分にとって大きな学びでした。
50代の強みは、熟成した配分にあると思います
僕は今50歳になりました。
若い頃になかった強みは、やっぱり経験だと思います。
昔は、闇雲でした。
ただまっすぐ走っているつもりで、実は回り道したり、後ろに下がったりしていたのかもしれません。
でも50代になると、いろんな仕事を見てきたぶん、ペース配分が少しわかってきます。
優先順位も見えるようになる。
何から手をつけるべきかがわかるようになる。
若い頃は、1から10まで順番にやっていました。
でも社会に出ると、仕事って12345では進まないことが多いですよね。
いきなりゴールから手をつけなきゃいけないこともある。
理不尽なこともある。
でも、社会ってそういうものなんだと思います。
だからこそ、一歩引いて俯瞰する。
ステップバックして状況を見る。
その余裕が持てるようになったのは、50代の強みだと思っています。
そしてもうひとつは、任せられるようになったこと。
昔はできなかった。
でも今は、人に任せることで、自分では思いつかなかった新しいアイデアや仕事のやり方に出会える。
それもまた、熟成のひとつなのかもしれません。
50代は衰えの季節じゃない。
僕はむしろ、深みと余裕と配分が増す季節なんじゃないかと思っています。
頑張りすぎなくても、ちゃんと前に進めます
この記事を読んでくれた人に、いちばん伝えたいのはこれです。
そんなに頑張りすぎなくても、いいんじゃないでしょうか。
あなた一人がそこまで無理しなくても、世界は回っていきます。
ちょっと休憩したっていい。
ちょっと遠回りしたっていい。
いつも頑張ってるんだから、少しのんびりいきましょうよ。
30/70の法則が正解だとは思っていません。
でも、こういうやり方もあるんだよ、ということは伝えたいです。
新しい仕事の進め方。
新しい家族との向き合い方。
そんなふうに受け取ってもらえたらうれしいです。
あなたの人生なんだから、あなたが主役です。
まず、あなた自身がその人生を楽しまないといけない。
一生懸命なだけじゃ、少し足りない。
楽しむこと。
余裕を持つこと。
それも同じくらい大事です。
世のため、人のため。
その世界の大事なパーツのひとつが、あなたです。
だからこそ、あなたがあなたらしくいられるように、ちゃんと余白を持ってください。
そのほうが、きっと家族という船も、まっすぐ進んでいきます。

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