50代 アイアンマン 挑戦した理由。「準備が整ってから」では遅すぎる理由

ニュージーランド・タウポで50歳からアイアンマンに挑戦する日本人男性の背中 ニュージーランド アイアンマン

ニュージーランド・タウポの静かな朝です。

数年前のある日の午後、学校から帰ってきた当時15歳の三女が、唐突にこう言いました。

「パパ、一緒にマラソン走ろうよ」

どうやら学校の友達に誘われたようで、彼女なりに「よし、パパと走ろう」と思い立ったみたいです。

世の中のお父さんなら、分かってくれるはず。思春期真っ盛りの娘が、父親をスポーツに誘ってくれるなんて、こんなに幸せなことはありません。僕は一秒も迷わず、即決しました。

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「いいよ、一緒に走ろう」

この何気ないやり取りが、僕を50代 アイアンマン 挑戦した「アイアンマン」という未知の世界へ引きずり込む第一歩になるとは、その時はまだ思ってもいませんでした。

料理長として見た、世界選手権の「熱気」

僕は今、タウポにあるホテルの料理長を務めています。数年前、タウポでアイアンマンの世界選手権が開催されたとき、僕のホテルの会場の一部が、大会を運営する人たちの拠点(支部のような場所)として使われていました。

そこには世界中からトップアスリートが集まり、自分のバイクをチューンナップしたり、レジストレーション(選手登録)をしたり……。会議室には緻密なスケジュール表が貼られ、レストランでは僕が作るパスタが連日売り切れ。街全体がお祭りのような熱気に包まれていました。

そんな中、僕は信じられない光景を目にしました。80歳を超えた選手が、世界選手権のゴールを駆け抜けたんです。

その瞬間、体中にざわざわと鳥肌が立ちました。同時に、心の底から強い願いが湧き上がってきたんです。
「俺もあの場にいたい。俺もあそこで、アイアンマンになってみたい」と。それは理屈ではなく、魂の底からの叫びのようなものでした。

水中のパニックで手に入れた「物差しの精度」

とはいえ、挑戦は前途多難でした。初めての練習用レース。20メートルほど泳いだところで、僕は水を飲み込んでパニックに陥りました。ウェットスーツが首を締め付け、息ができない。「これ、もうリタイアしていいですか?」とボートのスタッフに聞いたほど、本気で怖かった。

でも、あの日パニックになったおかげで、僕は「自分だけの対処法」を手に入れました。呼吸を整え、ペースを戻す方法。あの恐怖を経験したからこそ、「アイアンマンを舐めてはいけない」という心地よい緊張感を常に持てるようになった。若造の頃にはなかった、経験を糧にする「物差しの精度」が磨かれた瞬間でした。

「30/70の法則」が霧を晴らしてくれた

大会の2ヶ月前、仕事が殺人的に忙しくなりました。練習時間が取れない。体力も限界。「今週は夜中でも走らなきゃ」という強迫観念に駆られ、まるで鬼武者のような形相で自分を追い詰めていたんです。

その時、ふと「30/70の法則」を思い出しました。
「僕のゴールは、タイムを競うことじゃない。家族の待つゴールラインを笑顔で越えることだ」

そう決めた瞬間、目の前の霧がパッと晴れました。無理なトレーニングを「捨て」、余裕(余白)を持って取り組む。すると、不思議なことにトレーニングが楽しくて仕方がなくなったんです。景色を楽しみ、隣のランナーと会話を楽しむ余裕まで生まれました。

準備が整うのを待っていたら、人生は終わってしまう

最後に、戦友である同世代の皆さんにこれだけは伝えたいことがあります。
「準備が整ってから始めよう」なんて言っていたら、人生はあっという間に終わってしまいます。

もちろん、準備万端で進めたいと思うのは山々です。それが正論かもしれません。でも、もしあなたが「自分を変えたい」「何か新しいことをしたい」と強く願うなら、多少リスキーでも、まずは一歩足を進めてみるべきです。

今の自分にちょうどいい「身の丈に合ったこと」だけを繰り返していても、結局は「自分が想像できる範囲」の自分にしか成長できません。あえて自分よりレベルが高い場所、能力が高い人がいる環境に身を置いてみる。準備は不十分かもしれないけれど、飛び込んでみる。そうすることで、人間は自然と多くのことを学び、より大きく、深く成長できるんだと僕は信じています。

毎日、昨日と同じことを繰り返すだけでは、成長のスピードは上がりません。もしあなたが「行けるんじゃないかな」と一瞬でも思ったなら、そこがあなたのスタートラインです。

完璧じゃなくていい。格好悪くてもいい。
タウポの風を感じながら、僕と一緒に新しい一歩を踏み出してみませんか?

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